『美術手帖』2016年10月号|INFORMATION
「篠山紀信 快楽の館」展(原美術館)の開催を機に取材。
編集は田尾圭一郎さん。
なお展覧会タイトル「快楽の館」は、映画『去年マリエンバートで』の脚本などでも知られるアラン・ロブ=グリエの小説名(和題)から。妖しい社交館を中心にしたお話で、そこでの名物余興である小劇と、実際の出来事が折り重なって描写されます。そうして同じ出来事が視点をずらして再記述され、文中で三人称の「彼」がいつのまに「僕」に入れ替わるなど、奇妙な構造の物語。
いっぽう今回の篠山展は、美術館で撮影した写真群を、それぞれ撮ったその場所に設置・展示するものです。なのでたとえば、入口すぐの部屋でダイナミックなヌード写真の端に写る受付係が、ふと目線をずらすと実際にそこに居る、といったことも起こります(目が合って「貴女ですよね?」「ええ…(照)」的な無言の会話)。こうした、篠山さんいわく「入れ子のような仕掛け」は、上述の小説世界ともどこか重なるようで興味深かったです。
シノヤマネット|篠山紀信写真・映像ライブラリー